近年、無教養かつ浅ましい喫煙スケープゴートブームのせいで映画や音楽の世界がクリーンクリーンして気持ち悪いことこの上ありませんが、昔は逆にどんなときでも煙草の煙がもうもうとするいかがわしい世界でした。
映画で煙がもうもうとするシーンと言えば会議室や酒場、そして刑事たちが思い浮かびます。映画的なカッコいいシーンとしての煙草というよりも、これらは必死すぎて半分病んでいる人たちの焦燥を表現したりもしています。片時も煙草を手放さない刑事たち、いいですね。今や懐かしい演出です。
「UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班」は国のあり方が大きく変わりつつ或る時代の狭間に翻弄される人々を描いた映画です。悪い面を描きつつ、その中にとてつもないノスタルジーも感じる良作で、監督は後に同じようなテーマで完成度を高めた「マーシュランド」を撮りました。
煙草は焦燥だけを演出していないのは当然でして、そこかしこに人と人との繋がりを表現するシーンの小道具としても登場します。酒や煙草は人間を人間として生き生きとさせる効果を持ち、単純ではないのだということを示します。無駄であるものだからこそ大いなる意味を持ちますね。
煙草のシーンが撮れなくて不自由している映画制作の人は、この映画のように時間を少し遡った時代設定で映画を作るのがよろしいでしょう。