煙草への愛情を感じる「RAW 少女のめざめ」

「RAW 少女のめざめ」は2018年の春に公開していたフレンチ青春ホラー映画です。映画の内容はまあ置いといて、この映画には素敵な喫煙シーンが何ヶ所かあります。

ひとつは獣医学部の保健の女医が主人公のアレルギーを診察した直後に雑談しながらその場で煙草を吸うシーンですね。医者しかも女性が診察室で診断直後に煙草を吸いながら患者とお話しします。不愉快極まりないこの映画で数少ない良い人との良いコミュニケーションシーンです。人間味があり暖かい会話に煙草は不可欠。今の時代たいへん珍しいシーンとも言えます。

もうひとつは姉の怪我の件で病院にいる父子のシーンです。精神的にくたびれた状態の後、父親が娘に「吸うか」と吸っている煙草を手渡します。娘はそれを受け取り続きで吸いますね。緊張を緩和させる煙草の紫煙は精神安定剤でもあります。また、一本の煙草は親子の愛情も再確認させてくれます。たいへん素晴らしい喫煙シーンでした。

「RAW 少女のめざめ」にはそう多くの喫煙シーンがあるわけではありません。ですが煙草の素晴らしい効用を表現したシーンでありまして、ただの喫煙シーンとは訳が違います。「これは、わざとだな」と見ていて思いました。

こんな良い喫煙シーンを撮る監督はきっと煙草についての思想部長的人間に相違ありません。煙草の効果を心得ているからこそのシーンであり、わざわざ敢えて入れたっぽいからそう思います。

監督のジュリア・デュクルノーは1983年生まれの若手監督で「RAW」公式サイトに素敵な写真が掲載されていました。

ジュリア・デュクルノー監督(公式サイトSS)

ほらやっぱり。こんなポーズの写真をわざわざ撮らせるなんて、ただものではありませんね。煙草の良き理解者であるのは間違いないでしょう。断然支持いたします。

というわけでジュリア・デュクルノー監督の「RAW」は公開終わってますが配信やDVDでどなたでもご覧になれます。映画はかなり個性的で、ちょっときついっすよ。そういう話は本家サイトでいずれ機会があれば。

 

「希望のかなた」は最高の紫煙映画

アキ・カウリスマキの「希望のかなた」です。前作「ル・アーヴルの靴磨き」では愛の物語に移民の問題を捉えた傑作でした。「希望のかなた」は移民の物語に社会の有り様を示す傑作です。

「希望のかなた」のレストランはもちろん喫煙可能なレストランで、レストランとして完璧です。

これでもかと登場する素晴らしい喫煙シーンに釣られて煙草が吸いたくなり、映画館で見ていて悶え苦しみます。あぁこんなに苦しいのなら劇場なんぞに出向くんじゃなかったDVDを待っておうちでゆっくり見るんだったと後悔するかというとするわけありませんけど。

神経症的全体主義者的に喫煙を嫌悪する人たちがこの映画を見たら卒倒するでしょうか。嫌悪の人はアキ・カウリスマキなんか嫌いだろうから彼らがこの映画を見て怒りに身を震わせる事なんかはありませんよね。知らんけど。

妄想嫌煙おやじを殴り倒す爽快「ヒットマンズ・レクイエム」

「ヒットマンズ・レクイエム」(原題「In Bruges」2008)という大好きな映画があって、素敵な喫煙シーンもあります。

主人公が街で知り合ったレストランで女性と喋っています。女性は煙草を片手に喋ってますね。そして洗面に去ります。女性が去ったタイミングで隣の観光客夫婦があからさまに何やら嫌味をいいます。

主人公は嫌味を言った観光客夫婦の夫に向き合います。「今何て言った?」観光客の夫は典型的な嫌煙ファシストでエセ科学に洗脳された男です。例えば副流煙が人を殺すと信じこんでいるお馬鹿キャラです。

あからさまな嫌味を投げかけた瞬間後、主人公コリン・ファレルに思いっきり殴られ張り倒されます。

嫁はんのほうはワインの瓶か何かを持って戦う気満々ですので、なんと主人公は妻のほうもついでに殴り倒します。

ぃやっほーい。何と胸のすくすがすがしいシーンでしょう。現実世界ではもちろん嫌煙くんを殴り倒すことなど絶対できませんが映画の世界では何でもありです。

MovieBoo本編でも少し触れていますがここでも再びご紹介。喫煙シーンとしてかなり変わり種です。悪であることを照れることなく暴力で鬱憤を晴らせる特別な一本。

そしてもちろん煙草シーンに留まらず、ブラックさに満ちたハイセンス脚本で映画全編じつに見事な出来映えの「ヒットマンズ・レクイエム」は未だ伝説の名作。

ヒットマンズ・レクイエム

酒とドラッグはとことん、煙草は最低限の「マッド・ドライブ」

「マッド・ドライブ」です。「マッドマックス」でも注目されたニコラス・ホルト主演なのでマッドで掛けた邦題つけたんでしょうか。

無茶苦茶人間ですね、酒とドラッグと他人を蹴散らすことだけが好きな男です。こういうのが主人公です。「フィルス」「ドム・ヘミングウェイ」とかありましたね。イギリス映画で最近見かける嫌なやつどうしようもないやつとんでもないやつが主人公の系統の映画です。こういうの好きです。

注目していると酒とドラッグは欠かさず摂取しますが煙草をあまり吸わなかったような気がします。喫煙のシーンはいくつかあるんですが酒とドラッグに隠れて目立ちませんね。なくはないんですが。

そう言えば近頃、どうあがいても喫煙シーンを描くことが出来ない映画を見かけます。「マッド・ドライブ」はそうではありませんが、酒や葉っぱやドラッグをやっても絶対に煙草だけは吸わないという、そういう変な映画がたまにありますね。

酒やコカインやガンジャや殺人やクラブやパブや牛乳や緑色のケーキや遺伝子組み換えや劣化ウラン弾やレイプや貧困や奴隷や裏切りやカーチェイスやマチェーテや電気のこぎりや人体解体や連続殺人やCIAの陰謀や人種差別やマイノリティ差別やポップコーンや狂牛や食べて応援や精神病や犯罪や警察やマフィアやラケット、ビンク、バンプ、ブロンソン、ボリビアン、トゥート、ジュニア、チャズ、ナンセンスなどは平気でも煙草だけは絶対に描写しないという。不可解で不気味です。

イギリス映画ではさすがにあまりないかな。印象としてはアメリカ映画で見かけるかも。判りませんが。単に思い込みかもしれませんが。ビートルズのジャケから煙草を消した歴史に残る悪行を行った国だしオリンピックに向けてパブを禁煙にしたような国ですからね。油断はできませんけど。

「マッド・ドライブ」がそうではないのにくどくど書いてすいません。でも90年代で音楽業界でこんな連中の話なのに、それにしては煙草シーンが少なめでした。映画自体はとても面白いですよ。

と、書いてから予告編見ましたら、ここだけでも結構たばこ吸ってますね。そうするとあれですね、印象の問題で、喫煙シーンぜんぜん少なくないのかもしれません。酒とドラッグが多すぎて少なく感じただけかも。わはは。じゃあとってもいい映画だわ。素敵っ。

娘に掛ける父親の言葉に感動「エリザのために」

クリスティアン・ムンジウ監督の待望の新作「エリザのために」が公開中です。この映画のただ者でなさは置いておくとして、取り急ぎ紫煙映画としての好感触をお伝えします。

いろいろあって父親が娘の部屋で少しお話します。立ち去り際、さりげなく父親が娘に語りかけるその言葉に愛を知る喫煙者は心動かされることでしょう。

「たばこも吸ってるんだろ?吸っていいよ」

多少思い通りではなかったかもしれないが娘に対する愛情が籠もっていますね。いつまでも子供と思っていたけど、娘は人間として自立した存在です。それを踏まえた発言です。

娘は煙草は吸わないかもしれません。そんなことは問題ではありません。彼女をひとりの人間として扱おうとした父親の覚悟のシーンでもあります。

「エリザのために」では他にもよい喫煙シーンがたくさんあります。若い頃からの付き合いでかつて同志であったことが伺える警察署長との絡みで、署長がくるくると手巻きの煙草を作るシーンなんかもそうですね。

ムンジウ監督の過去の作品と比較するととても穏やかな印象すら受ける「エリザのために」ですが、父娘のドラマに隠れた国家レベルの絶望を体現する大人たちと絶望世代の娘たちとのギャップを突きつけるきつい話でもあります。というそっち方面は本家で書くとして、取り急ぎ紫煙映画としての素晴らしさをご紹介しました。

公式サイト:エリザのために

信仰心厚い道徳的映画なのに煙草が最高の「星の旅人たち」

古い映画やちょっと古い映画も気にせず書き綴る紫煙映画を探せです。こんばんは。姉妹サイトというか本家のMovieBooからもネタを活用します。本日は「星の旅人たち」です。もう時効なのでネタバレ全開、煙草に関する素敵なオチについてです。

「星の旅人たち」はとても道徳的な映画です。信仰心も厚い感じで倫理感もあります。いい人たちのいい物語であります。しかし肝心なところで煙草ネタをひとつ仕込んであるんですね。ここが素敵なところです。無煙さんみたいな嫌煙神経症患者が見たら「素敵な映画なのに唯一煙草の件だけは許せない。XXXXX」とか言いそうです。

本家ではネタバレ避けてお茶を濁しましたがここでは盛大にネタバレ行きますのでその覚悟でお願いします。

素敵な女性がひとり登場します。煙草が大好きな女性です。「この旅をやり遂げたら禁煙するのよ」と高らかに宣言しております。

映画の最後、無事に旅をやり遂げますね。旅の仲間も興味津々で彼女の禁煙を見守ります。

旅を終えた女性は大いに満足して、そしておおらかに旨そうに煙草を吸います。それは「旅の終わりに禁煙を目指すなどという愚かしいことをなかったことにしましょう!」っていう力強さでもありますし、「あら?禁煙するなんて言ったかしら?」と照れ笑いの逃げを打ったようでもあります。目的の遂行のために願を掛けて、それで上手くいったのだから願を掛けること自体には意味があった。だからそれでお終い、あー煙草おいしーっ、っていうさわやかな感じでもあります。

旅の仲間もニコニコと女性を見ます。心を通わせ合った仲間だからこそのこの暖かい眼差し。この終わり方の洒落ていることったらありません。このオチの軽妙さで「星の旅人たち」の印象が100ポイント上がったことをよく覚えています。

ついでに言うと、煙草を吸い、禁煙をすっぱり辞めたのが素敵な女性であるという脚本の設定もいいですね。むさ苦しいおっさんより素敵な女性がいいに決まっています。そして、煙草を吸う女性はもれなく素敵でございます。映画部の奥様もヘビースモーカーですよ。いいでしょ。

心穏やかに、少年院で煙草を燻らせる味わい深さ「太陽のめざめ」

カトリーヌ・ドヌーヴが非行少年の更生を導く判事の役というぶっ飛び設定の「太陽のめざめ」という映画です。これいい映画でした。

いい映画には漏れなくいいシーンがあります。
「太陽のめざめ」では非行少年が不良っぽく煙草を吸います。「おいこらタバコ出せよ」みたいなシーンもありますし、ただ格好をつけてキューっと吸うシーンなんかもあります。見ているこちらも一緒に吸いたくなります。

「無煙映画を探せ」という嫌煙ブログではこんなとき煙草シーンの回数を丹念に数えて報告されるわけですが、真似して作ったこちら「紫煙映画を探せ」では映画を見ている最中に喫煙シーンの回数を数えている暇などございませんのでとても真似しきれませんです。偏執狂的神経症的行動に感服するばかりです。

さて「太陽のめざめ」でとりわけ素晴らしいのが少年院での喫煙シーンです。雨が降って作業が出来ないのでみんなぼんやり雨宿りをしています。煙草を吸い、無言の中で仲間との連帯を深めますね。煙草を配る職員と収監されている少年たちの信頼も深まります。実におおらか、非行少年に大人が人として接することこそが更生への道です。

非行少年たちの喫煙シーン、最高によいシーンでした。フランスの教育は実に素晴らしいですね。

太陽のめざめ http://www.cetera.co.jp/taiyou/

働く人、賢い人、そして煙草のアニメ映画「風立ちぬ」

スタジオ・ジブリのアニメ映画「風立ちぬ」が公開されていた当時、煙草に関するいくつかのあほみたいな議論が目についていました。それを思い出して、ちょっと今更だけど観てみましょうということでぐったり二日酔いの最中に観てみました。

映画についての感想は別で書くとして、煙草シーンの素晴らしさに感動しまくり、ただ単に喫煙シーンが登場するだけでなくそこに必然や目的がはっきり感じ取れます。

宮崎駿氏というのは喫煙する方なんでしょうか。そうでなければあれほど良い喫煙シーンはなかなか描けませんね。実際どうなのか知りませんが。

頭の良い技術者がうんうん頭脳を酷使している最中に煙草に手を出します。煙草は脳のオアシスですから当然そうなります。アホに煙草は不要です(嘘です。アホにも必要です)

灰皿は山盛り、煙草が切れたら灰皿からまだ吸えそうなのを探してシケモクします。そのとき1、2本の吸い殻が灰皿からこぼれ落ちます。何というリアルで細やかな煙草シーンでしょう。

祖国から持ってきた最後の一本がなくなって哀しい思いをしているドイツ人と煙草を巡る出会い。「日本の煙草をどうですか」と差し出し、友好を深めます。煙草のシェアは敵意のなさの表現、人と人を繋げる潤滑油です。

病気の妻を気遣い煙草を吸いに部屋を出ようとする夫に妻は「ここにいてここで吸ってください」と病床で懇願します。愛の深さを表現する小道具として紫煙が立ちこめます。

働く人、賢い人、頭脳の酷使、友好、博愛、他者への思いやり、それらを描く時に煙草は必須のアイテムとなります。

煙草のシーンが多いと噂だった「風立ちぬ」、観てみたら重要なメッセージ性を伴う意味のある喫煙シーンばかり、大いに感心するよいアニメ映画でした。

https://www.youtube.com/watch?v=wIf3xqH5NXg

風立ちぬ 公式 http://www.ghibli.jp/kazetachinu/

過去の未来を振り返り紫煙に身をゆだねる傑作「ハイ・ライズ」

J・G・バラードという作家の熱烈ファンであった時期がございまして、バラード原作の「ハイ-ライズ」が知らぬ間に映画化されていて、しかも撮った人が怪作「サイトシーアズ」の人という、これは公開を知らなかったことが大いに悔やまれます。ですが目出度く商品化もされて快適ホームシアターで堪能することが出来るのです。

「ハイライズ」は70年代に書かれた原作小説を忠実に映画化しており、映画内での近未来が現在から見ると過去であるという作りになっています。監督の原作に対する敬意と思いも伝わります。

70年代から見た近未来、それは多分70年代後半あるいは80年代初頭です。そういう時代設定の細やかなる美術の仕事も堪能できますが何と言っても煙草が堪能できます。

70年代80年代はまだ文明社会が今ほど神経症的にイカレていませんから、大人のみんなは煙草を吸いまくります。世の中にまだ未来というものがあって文明社会には喫煙文化という得がたい美徳が充満しています。

旨そうに煙草を吸うだけでなく、実にまずそうにも吸いますし、というか煙草は日常であり生活であり人生そのものですから良いも悪いも関係ありません。

今の時代、これほど大らかに喫煙シーンを撮ることは難しいと思われます。差別主義者でだまされやすく他人を攻撃することだけが生きがいの嫌煙どもが何やらでかい顔と声で幅をきかせてしまった肛門期固着時代においてまともな喫煙シーンを撮るには相応の時代設定を虚構に与えてやるしかありません。というかそういう時代設定の虚構こそが紫煙映画として至福をもたらします。

ベン・ウィートリー監督の個性と攻撃性がバラードの原作とぴったりフィット、「ハイ・ライズ」は紫煙映画としても近年希なる傑作にして映画としても素晴らしい出来映えの、我々世代直撃ニューウェーブ近未来過去のドラッグムービーで人を選ぶが選ばれる人は最高の一時を過ごせます。

紫煙に関してはこんなところでまたもやMovieBoo本体を差し置いて殴り書きしやすいこっちに先に書いてしまいました。

ハイ・ライズ公式 http://www.transformer.co.jp/m/high-rise/

「UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班」時代の狭間と煙草の煙

ハードボイルドたばこ

近年、無教養かつ浅ましい喫煙スケープゴートブームのせいで映画や音楽の世界がクリーンクリーンして気持ち悪いことこの上ありませんが、昔は逆にどんなときでも煙草の煙がもうもうとするいかがわしい世界でした。

映画で煙がもうもうとするシーンと言えば会議室や酒場、そして刑事たちが思い浮かびます。映画的なカッコいいシーンとしての煙草というよりも、これらは必死すぎて半分病んでいる人たちの焦燥を表現したりもしています。片時も煙草を手放さない刑事たち、いいですね。今や懐かしい演出です。

「UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班」は国のあり方が大きく変わりつつ或る時代の狭間に翻弄される人々を描いた映画です。悪い面を描きつつ、その中にとてつもないノスタルジーも感じる良作で、監督は後に同じようなテーマで完成度を高めた「マーシュランド」を撮りました。

煙草は焦燥だけを演出していないのは当然でして、そこかしこに人と人との繋がりを表現するシーンの小道具としても登場します。酒や煙草は人間を人間として生き生きとさせる効果を持ち、単純ではないのだということを示します。無駄であるものだからこそ大いなる意味を持ちますね。

煙草のシーンが撮れなくて不自由している映画制作の人は、この映画のように時間を少し遡った時代設定で映画を作るのがよろしいでしょう。

映画「カスパー・ハウザーの謎」の窓辺のパイプ

ヴェルナー・ヘルツォーク監督1974年の「カスパー・ハウザーの謎」が2016年年末にリマスター再発売ということで綺麗な画面になったこの映画を堪能。

19世紀ドイツ、長年幽閉されていた身元不明の少年が保護されるという有名な事件を元にしています。カスパー・ハウザーは実際には少年ですが映画では青年です。

この映画の中にも素敵な喫煙シーンがありました。

謎の青年を窓辺から眺める夫婦のシーンです。夫婦が窓から顔を出して謎の青年を眺めています。夫は大きなパイプをぷかー、ぷかーとふかしています。

このシーンとてもいいですよ。窓辺に肘をついてるんですが、痛くないようにクッションを当てているという芸の細かさ。

興味本位で窓から見ているのですが、さほど強い興味もなくぼんやり眺めている風で、暢気な雰囲気です。

青年が保護されることになる街の人はみんないい人たちで、何だかんだと彼の心配をしたり世話を焼きますね。弱い個体をみんなして守るのは人間の生存意義に直結する社会性動物の特性ですね。

映画の内容や感想についてはまたあちらで書きますが、窓辺のパイプシーンが素敵だった「カスパー・ハウザーの謎」は思っていたよりうんと良い素晴らしい映画でした。リマスター万歳。

画像は カスパー・ハウザー | wikipedia から肖像画。

本家のほうに感想アップしましたのでリンクしておきます。

カスパー・ハウザーの謎

映画「アスファルト」のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

最近公開していた映画「アスファルト」です。今どこかで公開してるところあるのかな。やっていれば見るべし。姉妹サイトMovieBooでは絶賛の嵐です。これいい映画ですからそうなるのも当然。

本家Moviebooの記事はこちらにあります。

アスファルト

この中で我らが菩薩、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが夜勤の看護師の役で登場しまして、病院の裏で煙草を吸うシーンが出てきます。

夜になると現れる憂いを秘めた美しい菩薩がタバコ休憩するシーンが繰り返されまして、童話のようですね。彼女目当てに、自分のケチンボが仇になった車椅子のおじさんが夜な夜な会いにきます。この二人の話が、いくつかある話の一つで、映画的に大きなうねりがあるでもないのですが重要なポイント、大事なアクセントとなります。

看護師は憂いを秘めていますから、何らかの事情がありそうです。考え事をしているようでもあります。重大な悩み事か、あるいは漠然とした抽象的な不安や不満なのか、それはわかりませんが、いずれにしろ某かを含んでいます。

ケチンボ男はついうっかり「自分は写真家だ」と言います。看護師は本気にしたでしょうか。本気にしていないでしょうか。あるいは、どうでもいいと思っているか、はたまた、どっちでもいいと考えているのか、実に絶妙な受け答えです。

ちょっとした出来事があって、その時彼女はいつもと異なり自称写真家に対峙します。この時の看護師の複雑極まりない心境をヴァレリア・ブルーニ・テデスキは演じ尽くしますね。どっちとも取れるんです。実は本心がどうとか、そんなことはどうでもいいんですね。どっちもが両立できる心の有り様を表現しておりまして、映画を見ているこちらは仰け反りおののく有り様です。

ヴァレリアの喫煙シーンは「アスファルト」の要、紫煙映画の一つの到達点です。シガレットを摘んだ菩薩像のごとし。

紫煙映画 アイコン

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキさんという女優は、何がどういいのかよくわらないながらも強烈な魅力を秘めています。顔が綺麗とかそういう話ではない人智を超えた美の体現者です。

明日へのチケット」という映画では、汽車のチケットを取るだけのアシスタントの役ですが、彼女の微笑みに恋に落ちる中年男の物語から始まりますね。他にもいろいろありました。

何が魅力なんでしょうかね。目と表情と喋り方ですか。菩薩的な魅力をお持ちです。

MovieBooのヴァレリア・ブルーニ・テデスキの記事 ↓

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

タバコをかっこよく吸う人といえばジーナ・ローランズですが、「アスファルト」のヴァレリアはかっこいいとかそういうんじゃなくて、癒し系喫煙女神として特別な存在を映画史に残しました。

ヴァレリアの佇まいは宇宙です。

アスファルト公式 http://www.asphalte-film.com

紫煙映画 アイコンみなさまのおすすめ紫煙映画を教えてください。なんでしたら記事書いてください。

「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」でビールと煙草を満喫する

ニュージーランド ホビットの映画セット

紫煙映画は数々あれど、全年齢対象の大ヒット娯楽メジャー大作の紫煙映画は昨今ほとんどありません。でもひとつあります。ロード・オブ・ザ・リングとホビットのシリーズです。あれ?ふたつあった。いやむっつか。

紫煙ロゴ-小

ホビットの暮らしってのは牧歌的です。人々も楽天的で暢気です。指輪の魔力にも太刀打ちできる欲のなさ、いい人光線出しまくりの種族ですね。指輪物語のキャラクターの中でも際立っておりますから特別にホビットのシリーズまで制作されました。

ホビットの暮らしと言えばビールと煙草です。自然と共存し酒や煙草といったスピリチュアルなアイテムを日常的に摂取して日常の中にハレの部分を作り出します。

「ロード・オブ・ザ・リング」の1作目などで、ホビットたちのビールと煙草の素敵なシーンをたっぷり楽しめますね。

「ホビット」のシリーズは時代に影響されたのか思っていたより少なめですが、それでも節々で煙草を呑むシーンがあります。

紫煙ロゴ-小

煙草と言えば本来のアメリカ人による平和と共生の証ですが、北欧の妖精のようなホビットの設定にもとてもよく似合います。

ニュージーランド、ホビットの風景

そんなこともあって、このシリーズはどちらも好きなんですよね。

 

シークレット・オブ・モンスター の煙草シーン

「シークレット・オブ・モンスター」の序盤には苛ついたママが煙草を吸うシーンがあります。かっこよく吸いますがイライラの表現でしかないのがちょっと惜しいところ。

ぎりぎり間に合った「シークレット・オブ・モンスター」です。本家Movie Booでもまだ書いていないのにこっちを先に書くとは無礼千万。

本編でも他の部分で何度か煙草のシーンがありますが、時代設定(第一次大戦後〜第2次大戦前)の割には喫煙シーン少なめです。この時代しかもフランス人ならのべつ幕なし吸っていてもおかしくないのに。

なんと映画を喫煙シーンだけで語るというのがいかに馬鹿らしいかよくわかります。

ところでこの映画にはヨランド・モローやステーシー・マーティンなどお気に入り女優が出ていてお得でした。監督はラース・フォン・トリアーやギャスパー・ノエが大好きっぽい気持ちを隠しもせず、なかなか愛らしい映画でした。

ベレニス・ベジョは「アーティスト」でとってもかわいい女性を演じて注目の美女でしたね。「あの日の声を探して」や「ある過去の行方」など、良質の映画によく出ていますが、どちらもMovie Booに感想をまだ書いていない上に書く時期を逃してどうしましょうっていう作品ですので困りました。ベレニス・ベジョは「シークレット・オブ・モンスター」ではちょっときつい役でしたよ。

という話は本家でしなければ。公式や広報の悪口も近いうちにMovieBooで書きますね。

とりあえず紫煙映画としては序盤ベレニス・ベジョのタバコを吸う姿がビシっと決まっていたし、中盤のシーンではこちらも一緒に吸いたくなる威力がありましたので、まあまあというか良しとします。

一緒に吸いたくなる気持ちにさせるのは紫煙映画としての評価としては褒める言葉となりますね。

 

映画 デスドール を煙草の観点のみで語ると

2010年のアメリカ映画「デスドール」は呪いの学園ミステリーで、なんとなく面白い映画です。ただしこの映画、紫煙観点から残念なことが一つだけあるんですよね。

デスドール

「デスドール」ではややチンピラ系の味わいお兄ちゃんが出てくるんですが、この彼がどういうわけか禁煙中であるという。ああそうですかと、それだけなら何ら引っかかるところではありません。

このお兄ちゃんはストーリー的に探偵役、映画的には美味しい役どころの好人物ですが、ラストシーン近くでちょっと残念キャラになります。

すべてが解決し、弟とも関係が改善、仲良く兄弟で船に乗ります。兄弟仲が戻って上機嫌なお兄ちゃん、つい無意識で煙草を咥えますね。「禁煙したんじゃなかったの」と弟から微笑みツッコミを受けます。ハートフルシーンですね。

こういうとき、どうですか。弟くんは本当に非難してるわけじゃなく、ニコニコしてツッコミ入れてるわけです。当然ここは気持ちよく煙草を吸ってほしいところですよね。

ところがお兄ちゃんときたら、弟にツッコまれて「ああそうだった」とばかりに煙草を投げ捨ててしまいます。
「ほーら。わだかまりもなくなり、こんなドラッグはもう不用なのさ!」みたいなその態度に映画部室内ではブーイング出まくりです。

「こら煙草捨てんな」
「そこは気持ちよく吸ってぷはーっってやるべきシーンでしょうが」

せっかくの好人物がこのラストシークエンスですっかり馬鹿に見えてしまいました。

ということで、映画自体は面白かったんですけど、紫煙観点からは大きなマイナスをつけざるを得ませんね。

コーヒー&シガレッツ

とりあえず王様として「コーヒー&シガレッツ」挙げておきます。

姉妹サイトというか親サイトであるMovie Boo の該当記事は内容の乏しい読む価値あまりない投稿ですが、この映画は見る価値大有りの紫煙派必見の名作です。紫煙派のバイブル、文化と博愛の源、コミュニケーションの潤滑剤、対話と味わいの局地ですね。

この映画、地元のみなみ会館で公開するときに「この映画に限り館内喫煙可」という、今の時代からしてみれば信じられないような素敵な措置を取ってくれました。

Movie Booの記事自体は情報として大したこと書いてないんですが、言いたいことを完結に述べている(と書いた本人は思っている)のでこっちでも引用しておきます。

ある映画が人生に何か意味を与えることがあるとすれば、この映画こそそのひとつです。

現代人必見の都会の寓話。
非合理を嫌い、文化と芸術、煙草やコーヒーを憎み、合理性と経済性だけを崇拝する冷酷非情な拝金教信者でファシストの人非人を除くすべての人に強くお勧めしたい安堵のひととき。
コーヒー&シガレッツ | Movie Boo

ということで、至高の紫煙映画「コーヒー&シガレッツ」は人類の到達点の一つ、このサイトでは容赦なく点数をつけます。

100点

紫煙映画を探せを始めました

何を血迷ったか、紫煙映画を探せというMovieBooのサブ的なブログを開設。ただでさえ忙しくてその上いくつもウェブサイトの管理やってんのにこれ以上増やしてどうすんのと。でも煙草のブログがしてみたくてつい出来心で。ちゃんと更新できたらお慰み、映画にとどまらず広くたばこの文化的ブログになればさらに良し、飽きて頓挫していつの間にか消滅していてもそれはそれでありです。